シナリオ*せたがやたがやせ完全版10話

全国の月刊現代農業ファンの皆様!!月刊現代農業11月号が発売されましたよ〜!!
いや〜早いもので、「せたがやたがやせ」も残すところあと二話でお終いです。
今月の特集は「たいしたもんだ皮の力」ということで、野菜や果物の皮の利用法が載っております。
私が気になった記事は、温風乾燥機「まわる君」。
回転させて乾燥して干し柿、ドライフルーツ、干し芋ができるんだけど「まわる君」というベタなネーミングに目がとまりました。
それに去年の暮れお世話になった宮城県大崎田尻の記事も載っていました。田尻営農センター長さんの写真も載ってます。
センター長さんの農業に対する真摯な姿勢と田尻を愛する熱い思いに感動したのが昨日のことのようです。
田尻のみなさんお元気ですか〜!また行きたいよ〜!!
私の「せたがやたがやせ」は354ページに載っています。ヨロピク!!
そういえば「せたがやたがやせ」の中にも登場する茨城県石岡市をテレビ朝日の「人生の楽園」という番組で取り上げていました。
せたがやたがやせ第10話
○白薔薇幼稚園・ランチルーム
給食の準備ができて、席に着いている園児たち。
園児たち、にやにやしている。
福太郎「珠美先生、満作先生と太陽を連れて来ました」
珠美「ありがとう福太郎君。満作先生と太陽君席について下さい」
満作と太陽、顔を見合わせる。
トレーを持った調理のおばさんがしずしずと教室に入って来る。
調理のおばさん「こちらが本日のメニューです。召し上がれ(満作と太陽の前にトレーを置く)」
満作「どうしてですか?」
調理のおばさん「満作先生と太陽君が休んでいる間に、とうとう完食を達成しました」
翼 「僕たち、もうお残ししないよ」
健人「全部食べられるようになった」
福太郎「僕も」
彩 「福ちゃんは、野菜意外は残したことがないじゃない」
園児たち「(笑う)」
珠美「全員そろいました。頂きましょう!」
園児たち「いただきま〜す!」
○同・調理室
カラになった鍋を嬉しそうに洗う調理のおばさん。

○堤下家・田んぼ
満作が草取りをしている。
田んぼの横を郵便配達が通る。
局員「満作さん!速達です」
満作「ごくろうさまです(受け取る。その文面を見て驚く)何っ!!」
○速達郵便
ー穂が出たら速やかにスズメ対策をするべし 秀次ー
○堤下家・田んぼ
伝言板。
ー明日、防鳥ネットを張るお手伝い出来る方、十時に集合。何とぞ宜しく 満作ー
○同(翌日)
沢山の人が田んぼに集まっているのを見て驚く満作。
その中に翼の父もいる。
○同
杭を打つ翼の父。
防鳥ネットを広げる保護者、伊藤、地域の人達。
康夫の乗った高級車がその横を通って行く。
○車の中
運転手「社長、随分賑やかですね」
康夫「まったく困ったもんだ。これから祭でもはじまるみたいだよ」
言いながら顔はほころんでいる。
○バス停
バスを待つ健人と潤。
通りを走る車を見ている。
健人「潤!来た!来たよ!」
黄色の車が健人と潤の前を通り過ぎる。
健人・潤「(車を指差して)スーパー黄色!スーパー黄色!スーパー黄色!」
他のバスを待つ人達が呆気にとられる。
○バス車内
バイオリンを抱えた健人と潤が座っている。
健人「実際野菜を育ててみると、化学合成農薬や化学肥料を使用しないことは安全だと思うけど、現実的に大変だよね」
潤 「病気や害虫との戦い、除草も大変だよ」
健人「最近、テレビや雑誌で農業が取り上げられているとつい見ちゃうんだ」
潤 「そうそう。前はさ、将来、ヒルズ族になりたいとか思ったけど、この頃、過疎化や高齢化とか考えると日本の農業が心配になるよ。ネット系業界や外資系希望している人は五万といるけど農業は後継者不足だからね。誰かがやらないといけない。それに満作先生を助けたい」
健人「僕もだよ。だけどそう考えるとバイオリンなんか習う意味あると思う?」
潤 「う〜ん。でもほら、野菜にモーツァルトを聞かせると味が良くなるとか言うし、畑の真ん中で弾くのもいいんじゃない?」
健人と潤の会話を聞いていた小学校の教頭大淵が二人を見て驚く。
大淵N「何だ、幼稚園児じゃないか。(帽子の校章を見て)白薔薇幼稚園の生徒か」
○バイオリン教室
稽古が始まる前に健人と潤がコンビニのおにぎりを食べている。
バイオリンの先生岩崎が二人の横に座る。
岩崎「まぁ、三時のおやつにおにぎり?」
潤 「畑仕事してから来たからお腹が減っちゃって」
岩崎「畑仕事って・・・」
潤 「先生知ってる?コンビニ1店から出る生ゴミは年間4〜5トンなんだって」
健人「僕も新聞で見たよ。いろいろ問題になっていたけど、改善するために企業努力をしているみたいだよね」
潤 「食べ残すことに罪悪感を持ってる子供は4割以上、中学生より小学生の方が罪悪感が強いんだって」
健人「テレビ番組なんかで大盛りの店を回って、食い散らかしているのを見ると、大人が食べ物を粗末にしちゃいけないって教えなくちゃいけないのに」
岩崎「健人君の言う通りだよね。先生もあぁ言うのは良く無いと思う」
健人「大人がそんなことして、子どもが罪悪感を持つなんて日本って変な国だね」
岩崎「おっしゃる通り・・・」
潤 「ある調査で箸を正しく持てる子どもは家族間のコミュニケーションが取れているということが判ったらしいよ」
健人「家族で食べることによって正しい箸の持ち方、マナー、食べ物への感謝とか基本的な食習慣を身につけることができるんだって」
岩崎「頂きますを言うとか肘をつかないとか茶碗を持って食べるとか。そういうことね」
潤 「塾や習い事で忙しいから家族団らんが減っていて、一人で食事をとる子どもが4人に一人もいるんだ」
健人「それって僕たちの事じゃない?」
潤 「確かに・・。先生は家族団らんでちゃんと食事してる?」
岩崎「そう言われると・・・。確かにバラバラだわ。以後気を付けます」

○堤下物産・応接室
康生の友人、松井が母時江とソファに腰掛けている。
康生「本当に久しぶりだなぁ」
松井「ずっと海外で、この間帰って来た」
康生「そうか、お互いまだまだ隠居生活は無理だな」
松井「そういえば、うちの娘がバイオリン教室をしているんだが、その生徒がお前のとこの孫で、幼稚園で農業を教えているとかで、素晴らしい教育だって誉めていたよ」
康生「親父が残した畑と田んぼで困っていたんだが、変な男が現れて大騒ぎだよ」
時江「(無表情)」
康生「(時江を見て)お袋さん、元気ないな」
松井「(力無く)やっと日本に帰って来てみれば、お袋は痴呆になってた」
康生「!・・痴呆症・・」
松井「一年前、田舎にいたのを無理に東京に連れて来たんだ。独りだから体の事も心配だし、とにかく歳だからな」
康生N「愛子が話していたのねじれ現象ってやつか」
松井「東京に来た途端、外に出なくなって家の中で縫い物ばかりしていたらしい」
康生「知らない土地は年寄りにはキツイな」
松井「苦労して俺を育ててくれたんだ。楽させてやりたかったのに本当に申し訳なく思っている」
時江「(無表情)」
松井「本当は動けなくなるまで好きなだけ野良仕事させて自分でできるうちは独りで生活させてやればよかったんだと思う」
康生「うちの親父も去年死んだが、倒れる寸前まで野良仕事していたよ。それを思うと本望だったのかもしれないな」
松井「実は、そのお前のところの田んぼにお袋を連れて行ってやろうと思って、今日は訪ねてみたんだ。俺も忙しいから、さすがに遠くに連れて行ってやれないんだ。でも世田谷で畑や田んぼを見せてやれるならそれくらいの時間は取れるから」
康生「いつでも来てくれ、娘の幼稚園もあるし家に寄ってお茶を飲んで休んで行ってくれてもいいし。これから行ってみるか?」
松井「いいのか?悪いな」
康生「大学の頃、お前のお袋さんには随分世話になったじゃないか」
時江「(無表情)」
○堤下家・田んぼ
車の中から康生と松井が降りてくる。
松井「立派な田んぼじゃないか!」
遅れて降りてきた時江の表情が変わる。
時江「あいや〜。あおら〜や〜、まげたなやおらや。いづのまに田植えすだんだべか」
松井・康生「(唖然)」
時江「ががにかばねやみっこの!とごしゃぐでば!おらさ、のらすごどやらせでけろ」
康生「何て?」
松井「いつの間に田植えがすんだのか。母ちゃんに怠け者って怒られるから、私に野良仕事をやらせて下さいって」
時江「そこのわげすたつ鎌っこどこでがす」
康生「何て?」
松井「そこの若い人達鎌はどこですかって」
○同・1時間後
満作と時江、草刈りをしている。
松井「満作君、すまんね」
満作「汗水流して働くことの尊さを知っている人は人相がいい。見て下さい、どうですか婆ちゃんのこの表情」
時江「おめぇあんまおだずなよっこの!おら、ばあばでねぇでば。まだ築館小学校の6年佐藤時江でがす」
満作「通訳プリーズ」
松井「ふざけるな、私は小学6年生だって」
康生「お袋さんの今の記憶は6年生なのか・・・。佐藤って旧姓か?」
松井「あぁ、そうだ」
康生「そうか、お袋さんが何も話さなくなって引きこもった理由が分かったぞ。突然、田舎から連れて来られて、引きこもっている間だに痴呆が進んで、知らない人の家に厄介になっていると錯覚しはじめたんだ。世話になっているのに仕事をしないのは変だと思って雑巾縫ったり着物を縫ったりしているんじゃないか?」
松井「そうか・・・。言葉は通じない、畑もない、頼りの息子の俺はいないし。きっと孤独だったんだろうな・・・」
別人のように楽しそうに草取りしている時江。
松井「満作君、時々お袋をここに連れてきてもいいだろうか」
満作「もちろんOKです。時江はどうだい?」
時江「おら、満作がいるならいぐ。やんだわぁもう(恥ずかしそうに顔を隠す)」
康生「愛子のライバルがまた一人増えた」
松井「えっ?」
康生「いや、こっちの話し」
○不動産屋
店内に老夫婦が入って来る。
児島「いらっしゃいませ」
妻 「あの畑付き一戸建てなんですけど」
夫 「まだ売れてないですよね」
児島「申し訳有りません。あの物件は3棟ともすぐに売れてしまったんです」
妻 「まぁ残念だわ。もう夫婦二人だけで、家は小さくてかまいませんの。車も乗らないし。テレビなんかで田舎暮らしなんてやってますでしょ。興味はあるけど、やっぱり生まれ育った町を出たくないし」
夫 「田舎暮らしは憧れるけど実行する気はないんです。だから小さな土地でも畑をやれると思って来てみたんですけど」
児島「すでに何組ものお客様に来店いただいて、現在、畑付き住宅を準備していますのでもうしばらくお待ち下さい」

○白薔薇幼稚園・教室
園児たちにワラないを教えている時江。
時江「(器用にねじったりよったりしている)こうすっと、しめ縄ができのしゃ」
園児たち「すご〜い!!」
時江「こっつは馬っこ。馬っこは神様の乗り物だがら七夕やお盆にかざんのさ。正月のしめ縄の作り方もおしぇっから」
教室の隅で見ている松井と満作。
松井「家に帰って『時江はこの家に奉公に来たんだよ』って説明したら、納得してくれました。家事や庭仕事なんか本人の好きなようにやらせて、東北出身の家政婦さんを頼んだら、すっかり意気投合して、奉公が終わったら一緒に温泉に行こうとか言ってます」
満作「そうですか」
松井「いろいろ調べてみたんですが、場所や出来事や物を使って過去の記憶を引き出す回想法というのがあるらしいんです」
満作「回想法ですか」
松井「本人は少女のつもりだから廊下の雑巾がけとかするんですよ。家政婦さんも『自分の親を働かせているみたいで見ていられません』なんて言ってぼやいてたけど」
時江「満作兄ちゃんもてづだってけろでは。ときえすとりじゃおすえきれねぇでば」
満作「わがったでば!」
福太郎「はやぐすろでば、このっ!」
時江「おめだづもみやぎけんのすとすか?」
福太郎「んだ、んだ」
教室中、笑い。
調理のおばさんが入って来る。
調理のおばさん「はい、みなさん。おやつですよ。時江お姉さんが作ってくれた、みたらし団子で〜す」
時江「東京のすとにはしょつぺぇかもすんねぇけどあがいん」
健人「あがいん?」
満作「通訳プリーズ」
松井「どうぞ召し上がれ」
園児たち「いただきま〜す!!」
頬張る園児たち。
福太郎「うめ〜!!こんな美味い団子食ったことない!」
時江「松井のご主人様もお上がり下さい」
松井「あ、はい。(団子を頬張る)」
松井、手が止まる。
時江「なずした?うめぐねぇすか」
松井「お袋の味だ・・・」
時江「ご主人様のががとおなずあじすか?まんずよがったぁ」
松井「(涙がにじむ)」
時江「はだけの枝豆とれだらずんだ餅かしぇからねぇ」
松井「ずんだ!!食べたい!食べたい!」
満作N「(子どものようにはしゃぐ松井を見て)どんなに名誉や金があってもお袋の味は買えないってことか」
○堤下家・畑(夕)
台風の影響で風が強い。飛ばされそうなテント。
健人「満作先生、このテントは台風に耐えられないと思うよ」
福太郎「3びきの子豚のワラの家みたいなもんだね。フ〜!ときたら飛ばされる」
満作「どうすればいいかなぁ」
健人「やっぱり煉瓦の家が丈夫で一番いいよ」
満作「煉瓦の家か・・・」




